第4回 みんなの訪問看護アワード表彰式イベントレポート【3月8日開催】

2026年3月8日(日)、東京駅近くのイベントホール「My Shokudo Hall & Kitchen」(東京都千代田区)にて、「第4回 みんなの訪問看護アワード」の表彰式を開催しました。
本アワードでは、応募されたエピソードを所属や氏名をすべて伏せた匿名形式を採用。厳正な審査を経て、計25のエピソードが受賞作品として選出されました。
当日は、受賞者の皆さまに加え、特別審査員の先生方や協賛企業の皆さまにもご参加いただき、表彰のほか特別トークセッションや懇親会を実施。胸を打つエピソードや学びの多いトークが続き、会場は終始、共感とあたたかな拍手に包まれました。当日の様子や参加者の皆さまの声を、写真とともにご紹介します。
受賞者の皆さまへのトロフィー・記念品授与
まずは受賞者の皆さまへの表彰が行われました。受賞者お一人おひとりが登壇し、トロフィーと記念品を受け取るとともに、投稿のきっかけや受賞の喜びなどを語りました。


全受賞エピソード
受賞者の皆さまのコメントをピックアップしてご紹介します。
鈴木 開哉さん入賞 ウィル訪問看護ステーションよこはま北山田(神奈川県) 「訪問看護でしていることは外からは見えにくく、その価値が十分に評価されにくい面もあると感じています。だからこそ、自分たちのケアの意味や訪問看護の魅力を改めて発信したいと思い、応募しました。このような賞をいただき、大変嬉しく思っています」 |
坂口 葵さん入賞 カンナ訪問看護ステーション(千葉県) 「大変なこともありますが、訪問看護は毎日がとても楽しく、気づくと仕事のことばかり考えてしまうほど夢中になっています。これからは若手の方にもその楽しさを伝え、訪問看護の輪を広げていきたいです」 |
大賞に輝いたのは、OUR訪問看護ステーション(宮崎県)の中田 富久さんが投稿したエピソード「わたしらしさを、ともにつくる」です。血友病とHIVを抱え、幼少期から病院中心の生活だった利用者さんが、訪問看護を通して「自分らしい人生」を広げていくエピソードを投稿してくださいました。
大賞を受賞した中田さんのコメントを一部ご紹介します。
「私たちのステーションで初めて担当した利用者さんで、思い入れがあったことから、この事例を選びました。彼は社会とのつながりが薄く、当初はどのようにコミュニケーションをとればよいのか、私自身も試行錯誤しました。しかし、一つひとつのケアの必要性や意味、本当の願いを叶えるためのプロセスを根気よくお伝えする中で、少しずつ心が通うようになったと感じています。今も彼との関わりは続いています。この受賞を励みに、今後も一人ひとりの利用者さんと向き合っていきたいです」 |
中田さんのエピソードについて、特別審査員の高砂 裕子さんは次のように語りました。
「人生の『最期』に寄り添うエピソードも心に残りましたが、本エピソードは人生の『再スタート』に火を灯した点が印象的で、大賞とさせていただきました。全国訪問看護事業協会では、HIV感染者の方の在宅支援にも取り組んでいます。高齢化などで通院が難しくなった方が訪問看護を利用されるケースも増えており、このエピソードにあるように、どんな背景の方であっても、その方らしい暮らしを支える訪問看護の役割の大きさを改めて実感しました」
受賞エピソードをテーマにしたトークセッション
表彰後は、特別審査員の長嶺 由衣子さんと受賞者3名による特別トークセッションが行われました。3名のエピソードは、日本のグローバル化や超高齢化、施設内訪問看護など、多様な現場を映し出す内容で、訪問看護の本質や今後の展開を考える貴重な機会となりました。


海外の方への訪問看護を経験した小川 祥子さんは、利用者さんとご家族が抱える不安や孤独に寄り添い、多職種と連携しながら信仰や言語の違いに配慮しながら看護に当たった様子を紹介。看護だけでなく「日本で安心して暮らせる居場所づくり」を重視したと語った点が印象的でした。
施設内訪問看護で、8歳のお子さんを持つお母様のホスピスケアに携わった高橋 さゆりさんは、ご家族とともにお母様を支えつつ、施設全体でお子さんの成長も見守り、ご家族それぞれが自分らしく過ごせるよう支援したプロセスを語りました。お母様が旅立たれてからも、たくましく成長するお子さんの様子も語られ、会場はあたたかい拍手で包まれました。
寝たきりのご主人を認知症の奥様が支えるエピソードを投稿した米原 拓也さんは、「課題を解決するだけが看護のゴールではない」と実感したと語りました。多職種や地域と連携しながら利用者さんやご家族の「生きる力」を支えたプロセスを紹介し、訪問看護の本質や多様な支援のあり方を伝えました。
参加者の皆さまからは度々拍手があがり、また、受賞者の一人である八箇 多恵さんからは、富山市の取り組みも紹介されました。富山市では認知症等により見守りが必要な方へQRコード付きの見守りシールを配付する取り組みを実施しているとのこと。
訪問看護の多様な現場や想い、ご家族に寄り添う姿、多職種・地域での支援の重要性などが共有され、参加者にとって学びの多いトークセッションとなりました。
お祝いの声があふれ、笑顔に包まれた懇親会
式典終了後に懇親会を開催。大賞のエピソードは漫画化特典がありますが、懇親会の冒頭では、看護師で漫画家の広田 奈都美さんからもコメントをいただきました。

「訪問看護は、利用者さんの生きる力を支え、本当の願いを叶えるために、その方に合った関わり方や支援を考え、形にしていく仕事です。今日のエピソードでは、そのプロセスが具体的に語られましたよね。皆さんの経験は、全国のステーションの方々に多様なアプローチの仕方や考え方があることを知ってもらうきっかけになるはずです。今日の受賞式だけでなく、ぜひ日々の交流の中でもこうしたエピソードを語り合い、訪問看護の可能性をさらに広げてほしいと思います」
懇親会では、受賞者や特別審査員、協賛企業の皆さまが、このイベントの意義や訪問看護の今後の役割について語り合う様子が見られました。1日の訪問件数の調整やスタッフ間の教育・連携の工夫などを話題にするテーブルも。あちこちで熱心な意見交換が行われ、いつまでもお話が途切れない様子が印象的でした。


審査員の先生方のコメント
最後に、「みんなの訪問看護アワード」や表彰式について、特別審査員の先生や参加者の皆さまにうかがった感想をご紹介します。
高砂 裕子さん(一般社団法人全国訪問看護事業協会 副会長) こうして受賞者の皆さまが集まれたことを、大変嬉しく思います。訪問看護は「正解のない仕事」だからこそ、悩みや葛藤も多いと思います。でも、だからこそ利用者さんやご家族の人生に寄り添う、忘れがたい瞬間も生まれるのだと改めて感じました。訪問看護では、多職種との連携も含め、「みんなで考えること」がとても大切です。ぜひこれからも、ステーション内外問わず、多くの方とご自身の体験を語り合っていただけたらと思います。 |
高橋 洋子さん(公益財団法人日本訪問看護財団 事業部部長) 受賞者には若手の方も多く、40〜50代が中心といわれる訪問看護師の世界に新しい風が育っていることを嬉しく、頼もしく感じました。利用者さんの最期に寄り添うだけでなく、生きる力や希望を支える看護の大切さも改めて実感しました。看護師は病気だけを見る仕事と思われがちですが、こうしたアワードを通して、より多くの方に訪問看護師の多様な関わり方を知ってもらえたらと期待しています。 |
山本 則子さん(東京大学大学院医学系研究科 教授) 数々のエピソードを拝読し、訪問看護は本当にクリエイティブな仕事だと改めて感じました。「本当の願い」という言葉が何度か出てきましたが、利用者さんの本当の願いに応えるためにあらゆる工夫を尽くすところが、この仕事の素晴らしいところだと思います。一方で、独居の方や老老介護の方が増えるなど、社会の変化に合わせて、医療保険や介護保険といった制度自体も変わっていくことが求められているのではないかと感じました。 |
長嶺 由衣子さん(東京科学大学 公衆衛生学分野 非常勤講師) 受賞者の方々のエピソードから感じたのは、利用者さんやご家族を中心に置きながら、自分たちがどう変わるかを常に考えているという共通の価値観です。この柔軟性こそ、訪問看護の本質ではないでしょうか。また、受賞に至らなかった方も、エピソードを書いて送った行為自体を大切にしてほしいです。何が大事だったかを振り返り、自分の看護を客観視する時間を持つことは、必ず今後の成長につながると思います。 |

表彰式にご参加いただいた皆さま、本当にありがとうございました。大賞エピソードの漫画も公開していますので、ぜひご覧ください。
取材・執筆:高橋 佳代子
編集:NsPace編集部
鈴木 開哉さん
坂口 葵さん
「私たちのステーションで初めて担当した利用者さんで、思い入れがあったことから、この事例を選びました。彼は社会とのつながりが薄く、当初はどのようにコミュニケーションをとればよいのか、私自身も試行錯誤しました。しかし、一つひとつのケアの必要性や意味、本当の願いを叶えるためのプロセスを根気よくお伝えする中で、少しずつ心が通うようになったと感じています。今も彼との関わりは続いています。この受賞を励みに、今後も一人ひとりの利用者さんと向き合っていきたいです」
高砂 裕子さん
高橋 洋子さん
山本 則子さん
長嶺 由衣子さん